第32章 からかい

工藤達央は、かつての記憶を一部失っていた。まるでそこだけが削り取られたみたいに、何をどう思い出そうとしても真っ白な空白のまま。

失われた記憶を取り戻すには、まず壊れた経脈を修復し、それから少しずつ記憶を掘り起こしていくしかない。

工藤達央は何度も当時のことを問いただしたが、安藤莉理は一文字たりとも口を割らなかった。わざととぼけて、話を逸らすばかりだ。

結局――あの空白を埋めるのは、自分しかいない。

「みんな出て。工藤達央と二人で話がある」

安藤莉理が一同を見渡す。

その声に逆らえる者などいない。会議室の面々は次々と席を立ち、最後に残ったのは工藤達央と安藤莉理だけだった。

扉が閉...

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